大腸内視鏡検査前処置・ニフレックとスクリットの比較

高齢者を中心とした大腸洗浄度の比較

医療法人野毛会 もとぶ野毛病院玉城葉子(内技)・山城珠美・天久美鈴
医師:久志一郎・平良薫・山田護
医療法人泰山会 まつしまクリニック医師:松嶋顕介



大腸内視鏡検査においては、その前処置である腸管の洗浄度の善し悪しが検査時間・診断・治療を行ううえで 、重要な因子となる。 当院は、大腸癌検診の2次検査の対象者は高齢者が多く、又 経口腸管洗浄液を用いた前処置が主であり 今回、私たちはニフレックとスクリットを使用し、その飲みやすさと腸管洗浄度に重点を置いてアンケート調査を行い比較しましたので、報告する。






[対象者]

平成12年5月から8月までの4ヶ月間に大腸内視鏡検査を行った高齢者で、ニフレックとスクリットがほぼ同数になるように振り分けた。 その打ち分けは男21名 女21名で平均年齢74歳である。

画像


[成分比較]

ニフレックとスクリットの成分に差は認められない。しかし、スクリットのメーカーによると、ポリエチレングルコールの生成過程を変えたために スクリットは飲みやすくなったということである。

画像


[区分]

ニフレックとスクリットの洗浄度を比較する上で大腸を@回盲部〜上行結腸、A横行結腸、B下行結腸、CS字状結腸、D直腸の5つのパートに分けました。 また、各部位における洗浄度をA=便及び洗浄液はみられず、B=便は存在しないが洗浄液が多い、C=便のカスが存在し観察にやや支障あり、D=便の固まりがあり、観察に支障ありとした。

画像



[洗浄度の比較]

ニフレックとスクリットの各々のパートにおける洗浄度の比較である。ニフレックは直腸及び深部の洗浄度が良好な成績をおさめているのに比較し、スクリットはS字状結腸と深部に残査が多いという結果がでた。

画像



[アンケートの結果]

被険者42名におけるニフレック・スクリットの飲みやすさ、初回排便までの時間、排便回数を比較したものである。 飲みやすさに関しては 75%の方がスクリットが飲みやすいとの事であった。又、飲みはじめてから初回排便までの平均時間はニフレックが35分、スクリットが50分であった。 平均排便回数はニフレックが8.3回 スクリットが7.7回で、飲み終えるまでの時間は両者に差はなかった。

画像



[施行者の評価]

内視鏡施行者の両製品に対する評価である。腸管内残査 粘膜面の変化、被検者のバイタル上の変化 の3項目をもって行なった。 検査を施行する上で、粘膜面の変化やバイタル上の変化に差は認めなかったが、スクリットの方が 腸管内の残査が深部と下部に多く認めた為、注意して観察する部位の洗浄が悪く 検査に支障をきたした事で、 施行者は スクリットはニフレックに劣ると総合評価した。

画像



[結語]

@腸管洗浄度はニフレックが良い
Aスクリットが飲みやすい
B被検者の粘膜変化およびバイタルに差は認めない
Cスクリットがニフレックより価格が安い

画像



内視鏡検査に携わる技師として 検査の前処置が より良いものを求めるのは当たり前と思うが、被検者と施行者との立場の違いや考えの違いがあり、両製品を比較することはむづかしいと思った。 今回はニフレックとスクリットの製品の比較をしたが、長寿社会沖縄において、今後更に 増えるであろう 高齢者の大腸検査が、よりスムーズに行えるように、そして 苦痛の少ない前処置が出来るように努力していきたいと思う。



〜弟8回 日本大腸検査学会九州支部会に参加して〜

平成12年9月2日(土)

鹿児島県歴史資料センター「黎明館」大講堂にて開催された「日本大腸検査学会 九州支部会」に参加しました。 九州各県より、医師及びコメディカルの方々が、一同に集まり、特別公演・教育公演・一般公演・パネルディスカッション・などが行われました。 「大腸検査の前処置について」や「感染症対策」「低侵襲大腸検査を目指して」など、いろいろな演題があり、どれも、興味深いものでした。各々の病院がいろいろな前処置を工夫しており、また 各施設も同じことで悩んでいるんだなあ と実感しました。 今回、研究発表をする為に、資料を読んだり、再度 大腸検査の前処置について考える機会になりました。研究会で取り入れた情報をこれからの検査に役立て、高齢者の大腸検査が スムーズに できるだけ苦痛を少なくし 行えるように努力していきたいと思います。