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大腸仮想内視鏡の改善点

放射線科 診療放射線技師
玻名城 英已

[はじめに]

 当院ではH23年4月にMDCT装置を導入しCT Colonography(CTC:大腸仮想内視鏡検査 以下:CTC)を実施してきた。昨年のCTC導入当時は空気を注入して検査を行っていたが、注入時に苦痛がある事と検査終了後に膨満感が消えにくいとの声があり、それらを解消するため炭酸ガス注入を検討していた。
 そんな時今年4月に、診療報酬改訂で炭酸ガスを使用する事により600点加算算定できるようになり患者様の苦痛の少ない炭酸ガスを腸管内に注入し検査を行っている。
 炭酸ガスの注入には、大手企業の注入装置があるが、高価であるため安価で安全に腸管内に注入する方法を上田院長と検討し考案したのでここで報告する。
 また、腸管洗浄液に陽性造影剤を混ぜる事で残渣・残水を標識し容易に病変と識別する方法を「 腸管洗浄液造影法 」と呼び合わせて発表する。

[炭酸ガス注入方法]

1,きっかけ
 炭酸ガスを注入するには、大手企業の注入装置がある。 腸管内圧を一定に保ちつつガスを自動送気するのが特徴で、腸管を描出するのに画期的な装置である。この装置は高価なうえに、毎回使い捨てカテーテルを使用しなければならず、検査頻度の低い当院では、装置購入に踏み切れずにいた。
 そこで上田院長と他に方法がないか検討を重ね、安価で安全な炭酸ガス注入方法を考案した。
2,炭酸ガス袋考案
 医療用炭酸ガスボンベから直接腸管内に注入するのは過注入の危険性があるため、予めガス袋を作成し炭酸ガスを小分けしてから使用する事を考えた。
3,ガス袋作成
 ガス袋は、分厚いビニールをヒートシーラーで熱圧着して袋を作成する。片面に小さな穴を空けて開閉可能なコックを取付け、ゴム管をつなげれば完成である。( 図1参照 )
 ガスボンベから炭酸ガスを袋一杯に充填する。ガス漏れの確認は水を張ったバケツの中にガス袋を入れ、気泡の有無を確認すればよい。また 計量容器を水中に入れ空気を抜き 袋の中のガスを計量容器に押し出せばそのガス量が計測できる。この方法で事前に500mlと1000mlと2000mlの袋を作成し用途に合わせて使用する。

[腸管洗浄液造影法]

 CTCは、前処置として下剤と腸管洗浄液で強制的に腸管内容物を排出させて検査を行うが、毎回、残渣・残水が多少残ってしまう。 しかしそれでは、残渣がポリープとして偽病変となり、残水がピットホールとして盲点をうみ発見率や診断率が低下してしまう。
 病変の区別にCT値を計測し値のバラツキを判定して診断し、残水は体位変換で盲点を移動させ補間しながら撮影してきた。 それでも識別しにくい場合があり内視鏡検査へ送る事もあった。
 そこで残水・残渣と病変を区別する為に、腸管洗浄液に陽性造影剤30ccを混ぜて飲む事で残渣や残水を高濃度に標識し容易に区別する方法を検討し実施した。 又 前日の食事も当初は、消化の良いものと指導をしていたが、麺類に野菜が入っていたり、味噌汁に具が入っていたりとしっかり指導がなされていない背景があった。
 残渣を無くすため食事を徹底し、検査食を食べてもらい取り組んでいる。 ( 図2参照 )

[前処置]

1,検査前日の夕食は、大腸検査用検査食 又は 麺のみ・ご飯・汁のみ。夕食後ヨーデル2錠を服用
2,当日朝来院し9時からニフレック2000mL+ガストロ30ccを混ぜた腸管洗浄液を2時間かけて飲む
3,検査16時開始まで排便を促す。排便前に左側臥位→仰臥位→起立→排泄のローリングを行い排便してもらう。体位変換を行うことで残水を少なくするためである

[検査方法]

 検査16時頃開始 腹臥位、仰臥位、必要に応じて側臥位を撮影。検査時間は10分~15分。
1、肛門から直腸カテーテルを挿入固定する。
2、予め2000mL袋に充填したガスを2連球ゴムポンプに連結し手動で腸管内へ注入していく。個人差はあるが2200~2800mLくらいで膨満感が出てくる。その経験から、まずは2000mL袋を使用して左側臥位でガスを全注入し腹臥位になってもらう。
3、1000mL袋に取替え ここからはさらに慎重にガスを注入する。患者様とコンタクトを取りながら回盲部へ手をあて慎重に行い、膨満感と腸管圧が出てきたら注入をやめすばやく腹臥位を撮影する。
4、その後、背臥位にて炭酸ガスを再度注入し膨満感と腸管圧が出てきたところですばやく背臥位を撮影する。
5、基本は腹臥位、仰臥位の2方向撮影だが、残水による盲点がある場合、側臥位も追加して行う場合もある。変更・改善箇所は表1を参照の事。

[結果]

 ガス袋を使用した炭酸ガス注入は、空気に比べ体内への吸収速度が130倍早いといわれ検査後の膨満感や違和感が軽減されるうえ送気中の苦痛がない。また予めガス袋でガスを計量してあるので、注入量がわかり易く安心して検査が行える。 その事から検査時間の短縮にも繋がった。 以前は空気の注入量がわからず腸管穿孔をおこさないか不安もあった。
 造影剤を混ぜた腸管洗浄法を施行して H23年当時と比較すると残渣が激減したと感じる。これは 検査前日の食事を検査食に切替えるなど食事指導を徹底したためである。しかしながら残渣がある場合もある。
 図3を見るとポリープと間違えそうな所見だが、腸管洗浄液造影剤が高濃度として残渣を標識している。本来ポリープならば、造影される事はなく均等なCT値を示す。しかしこの場合は、高濃度と空気が交じりCT値にバラツキがあり残渣による偽病変だと容易に識別することができる。
 また図4は、 残水中にある残渣が浮遊している画像である。これは腸壁と分離している事からポリープではないと分かりCT値にバラツキがあるので容易に残渣と判断できる。その事から判定しやすくなったと感じる。
 図5はH23年当時と現在の残水比較である。残水のある場所はポリープが隠れ盲点となるため 残水がない方が望ましいとされている。そこでトイレに行く時は、左側臥位、仰臥位、右側臥位、起立の順で患者様に体位変換後に排便してもらい残水がないよう工夫を行ってきたが、思ったより効果がないように感じた。また患者様も高齢者が多いため体力を消耗するようでキツイとの声が多く聞かれた。 ただ残水は高濃度として白く標識されているので、周辺臓器のX線吸収値に差がうまれポリープやバウヒン弁の識別ができる事がわかった。
( 図6参照 )盲点とばかり思っていた残水が診断にも利用できるのではないかと感じている。

[考察]

 腸管洗浄液造影法を実施してきての評価を表2に示す。この検査法で施行技術や画像構築などあらゆる面で向上したと感じる。CTC導入当初は、偽病変が多く存在し画像解析・構成にも時間がかかっていた。
 今回の検査法では、造影効果により偽病変を簡単に判断することができる。また ワークステーションによる画像解析も造影効果で以前より容易に行えるので画像構築が短時間ですむので、患者様へ検査結果報告書(図7参照)として作成し提出できるようになった。
 以上の事から前処置や検査法を変更し
・食事指導の徹底により残渣が激減した。
・残渣・残水が標識され評価しやすい
・炭酸ガスの注入に苦痛がない。
・検査時間・画像解析時間の短縮。
・結果報告書を作成し患者様へ提出
 などあらゆる箇所が改善したと言える。しかし欠点も見つかった。
・造影剤が苦くて飲みにくい。
・ローリングが体力的に厳しい
・当日の前処置時間に7時間もかかる
 と患者様にとって厳しい箇所もあった。
 そこで当日の前処置を自宅でできないかと考える。もちろん高齢者や理解力に乏しい方への施行は、脱水や心理的不安があるとの意見があり難しいかもしれないが若年者には、自宅で前処置を行う事で体力的にも精神的にも負担が軽減すると考える。CTC検査時間も10分程で終了するので前処置を自宅で行い、その後に来院し検査をすれば病院に居る時間は30分ですむと考えている。その他 残水でポリープやバウヒン弁の識別ができるようになったが、やはり残水はないほうが望ましい。そこで腸管洗浄液の量を少なくする方法を考えてみた。例えば2000mL飲用しているのを1200mLするなどして腸管液そのものを減らす。そうすれば残水も減るのではないかと考える。
 以上の事から腸管洗浄液造影法は欠点もあるが、有意義な検査方法であると考える。
 欠点をさらに追求し医師・看護師と今後も検討しながら今後も検査に努めていきたい。

[参考文献]

INNERVISION 2008:23(Suppl 1):4-5
アールティー 2011-52 Topics:CTコロノグラフィー

最終更新日: 2013/10/05

 
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