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医療コンシェルジュが果たす役割
~アンケート調査から会計待ち時間について考える~

医療法人野毛会 もとぶ野毛病院
総務課 山入端道代・謝花千夏

[はじめに]

 当院では近隣の病院に先駆け、昨年9月より「医療コンシェルジュ」を導入した。医療コンシェルジュの導入に当たり、その果たす役割と病院全体の医療サービスの向上を目指し、調査したことを報告する。アンケート調査は病院を評価する患者様や家族の声を把握し、その結果を踏まえて今後の課題を明確にし対策へつなげることを目的とした。
まず、医療コンシェルジュの言源はフランス語で「門番」、ホテルなど宿泊客のおもてなしをする案内人のことを指し、『あらゆる要望に対応する総合案内係』である。当院では外来にて患者様(以後 患者)をお迎えし、帰られるまでのサポートをしている。主に外来ホールにて、お迎えや院内の案内、車椅子の用意、タクシー・送迎バスの手配、見舞客の病棟までの案内、小さいお子さんの見守りやママの手伝いなどを行なっている。

[アンケート調査の対象と方法]

対象:外来受診患者 200名
期間:9月7日(金)~9月28日(金)
方法:患者自身に関する質問、外来で関わる各部署別{受付(事務部)・外来看護部・医師}の接遇満足度、待ち時間についての満足度、院内美化に関する満足度、医療コンシェルジュについて等15項目のアンケート調査を行なった。

[結果]

1、患者自身に関する質問
 当院に通院する患者は本部町在住の方が86%と大半を占め、近隣の名護市や今帰仁村は4%~7%と少数でその他が3%であった。年齢別でみると10歳未満の21%が最も多く(保護者回答)、50代~80代が半分以上を占めている。診療科目別は内科が54%を占め、小児科21%、外科17%、その他8%となっている。因みにアンケートの200名の内訳は図1の通りだったが、調査期間の9月総患者数は延べ2,000人(レセ件数1,308件)で、内科52%、小児科27%、外科12%、その他が9%を示し(図2)、ほぼアンケートの傾向と同様であった。
 また、当院を選択した理由として第一位は「自宅や職場に近い」という理由が半分以上で、「かかりつけの医師がいる」「信頼できる専門医がいる」という医師重視での選択も目立つ。
2、外来患者に接する職員の評価について
 ここでは受付から会計まで患者と関わる職員について、言葉づかい、身だしなみ、説明の内容や相談のしやすさ等、それぞれ8項目の対応と接遇について評価して頂いた。評価結果の平均値から見ると、「とても良い」の高評価を一番得ているのが医師である。事務職員については高評価が少ないが不満だと言う評価もまた一番少ない。患者の不安を直接聞いて処置をする看護師や医師は患者の高評価を得やすいが、また満足が得られなかった時の悪い評価も受けやすい。しかし、全体的に「普通」よりも「満足」「とても良い」の高評価が大半である。(図3)
 実際の患者の要望や意見として事務職員に対して「受付カードがあるといい、毎回名前や住所記入がめんどうだ」や「親近感があってアットホーム、とても優しくて親切で上等です」などがあがっている。外来看護師に対しては「全てにおいて少しずつ良くなってきており嬉しく思います」「皆さんとても親切です」など。医師に対して「信頼しているから病院も替えずずっと通っている」「ワクチンなど小さな質問にも丁寧に対応してもらっています」などの声があった。
3、待ち時間について
 ご意見箱に投稿される内容の多くは待ち時間の不満を訴える声である。その待ち時間についてどれだけの患者が実際不満に思っているのか調査した。調査の内容は(ア)受付→問診の間、(イ)問診後→診察の間、(ウ)診察→会計の間の3パターン分けて行なった。もっとも不満の声が多かったのは(ウ)の待ち時間である。
 200人のアンケートの中から192人の待ち時間を実際に外来情報版の時間から調査することができた。検査や不在があった患者を含めても(ウ)までの時間よりも(ア)、(イ)の方が待ち時間が長い。また検査や不在が無い患者の場合でも(イ)の方が倍長く待っていることが分かった。
 「ではどれくらいの時間から長いと感じますか」と質問を投げかけたところ、30分が最も多く、60分待てるという方もいた(図5)。待ち時間の集計の結果、診察までの平均待ち時間は39分で、一番多く不満の声があった会計時の平均待ち時間は17分間である。このことより、会計時の17分の待ち時間は20分以上待てないという18%の患者が不満に思っていることになり(図6)、診察時の39分の待ち時間は40分以上待てないという73%の患者が不満に思っていることになる(図7)。しかし39分待ってもほとんど不満の声が上がっていない診察待ち時間に比べ、18%しか不満に思っていないはずの会計待ち時間に対して多くの不満を訴えていた。
 この事から診察に入るまでの時間より診察後の時間の方が待っていると感じる患者が多いことがわかる。患者が来院する目的が医師や看護師に診てもらいたい、治してもらいたいという欲求だとすると、その目的が達成できた後の会計は特に待たされていると感じる心理的な問題だと考えられるため、時間短縮も大切だが、どのように待ち時間を過ごして頂くか、どう関わっていくかが大切だろう。

[医療コンシェルジュが果たす役割]

 外来ホールにて医療コンシェルジュが配置され約1年が経つ。実際当院を利用される患者の55%の人が医療コンシェルジュの存在を知っており、85%の方が設置について良かったとの評価している。患者からの声としては「子連れなので(複数)抱っこしてくれたり、トイレに付き添いなど助かります」「話をするだけで不安な気持ちが和らぎ安心感がある」「バスの手配や車椅子の介助をして頂いたり、その際に声をかけて頂けるだけで有難く思います」など足の不自由な高齢者や小さな子供を連れている母親に感謝の声を多く頂いた。
 自動車から車椅子の移乗やトイレ介助のお手伝い、小さな子供の子守、お話を聞く等の小さな手助けや近づきが患者に安心感や感謝の気持ちを持って頂けることがわかる。
 コンシェルジュについて、100%近くの高い評価であったが、そのコンシェルジュの気になる我々の行動を1つ紹介する。気配りの一つ一つは小さくても職員全体で意識することで、患者の満足度や信頼度は向上すると考える。

[考察]

 院内研究報告会で機会を頂き、職員全体へ外来患者の声を伝えたいと考えアンケート調査を実施した。患者の満足の声も多く頂いたが、不満の声も多々あった。特に会計の待ち時間に対して不満の声が集中していた。調査から実際の待ち時間の長さよりも、来院の目的が果たされた後の会計待ち時間は心理的な「待たされている」という感覚の方が強いことがわかった。これまでご意見箱に「待ち時間が長い」という内容の投稿が多くあり、その都度改善してきた。外来・医事課職員の努力もあり時間が短縮し改善されてきているが、それでも尚不満の声が上がってきている。このことから単に時間を短くすることだけに着目しては、業務上のミスが増えてくる可能性もあると考えられるため、それ以外での対策も必要である。
 対策として考えられるのは、
1、外来ホールに会計待ちのスペースを作る。
 期待できる効果として、どれだけの人が会計で待っているのかが、職員も患者も見てわかる。患者から見て待っている人数でおよその待ち時間が把握できるし、また新規の患者からも診察で待っている人の混み具合を一目で知ることが出来ると思われる。
2、待ち時間に退屈させない工夫。
 例えば、iPadの導入で新聞や雑誌等を読んだり、ゲームを楽しんだり、ネット等を気軽に出来るようにする。
3、当院の送迎バスを利用している方の優先。
 理由として高齢者の方は、送迎バスの午前・午後の最終時間を気にして焦る方が多いので、バス利用者を優先することで待ち時間の不満解消になると考えられる。バスを利用している方に対してカードを作成し、受付時に提出して頂き、カルテに挟んで会計までまわす等の工夫をする。
4、患者に対しての気配り
 患者と関わる部署の中でコンシェルジュに対して高評価が目立つのは、患者に対する小さな心配りが多彩だからと考えられる。その理由としてコメントの多くに「声をかけてくれる」「見ていてくれる」「気遣ってくれる」等の些細な行動に対して大きな評価を得ている。これらは患者にとって安心感を与えているようだ。コンシェルジュはおもてなしの仕事がメインであるからこれだけの評価が得られているが、医師や看護師、事務職員も声掛け等の小さな気配りから患者の不安を和らげるなどの効果が得られると考えられるため、普段から取り組みが必要だと思う。
 患者に対するコミュニケーションや接遇は、病院の医療安全に並ぶ重要な要素であると考える。つまり会釈をする等いつも些細と思えることを全職員がきちんとすることで結果的に口コミで患者が増えたり、また働く職員のモチベーションのアップにもなり得る。当院をご家族や知人へ勧めたいと思う人の数が一人でも増えるよう、努力を積み重ねて行きたいと思う。

  [引用・参考文献]

1)医事業務 2012年9月号 p44~p57 産労総合研究所
2)病院経営における患者満足度向上の必要性について:http://www.ikss.net/enterprise/images/164.pdf
3)医療コンシェルジュ研究所:http:// http://www.jmclmc.jp/
4)亀岡市立病院外来・入院患者様アンケート調査の報告:http://www.city.kameoka.kyoto.jp/hospital/news/0903-no1.html
5)新南陽市民病院アンケート調査結果(外来患者)

最終更新日: 2013/10/05

 
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