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2007年 全日本病院学会 秋田大会

看護記録測定の分析

医療法人野毛会 もとぶ野毛病院
武田 由紀子

[はじめに]

当院は、沖縄県北部の本部町にある医療療養病床150床の病院です。以前から業務の省力化・効率化を目指しバイタルなどの看護記録の電子化を行ってきた。
今回、デジタル保存しているバイタルサインなどの看護記録について「当院ではどのような傾向があるのか」という興味からデータを集計・分析したこところ日常業務では、気付きにくかった測定バイアスが明らかになったので報告する。

[対象及び方法]

1年間に測定した入院患者様のバイタルなどのデータを項目別にグラフ表示し検討。

[結果と分析]

  1. 体温(電子体温計で90秒測定、総件数は約96500件) 画像①
    結果は36度台が多く大まかには生態の分布を示しているが、36度1分と36度7分に落ち込みがある。その原因は明確ではないが36度台にあり37度以上にはないことを考えると入力ミスではないかと疑われる。なぜなら発熱時には値が重要になるので入力も慎重に行われ、ミスはなくなるのではないかと考えられる。そのほかに体温計自体にバイアスがかかっている可能性も否定できない。

  2. 血糖(簡易血糖測定器で測定、総件数は約8000件) 画像②
    ほぼ生態の分布を示している。

  3. 脈拍(総件数は約78000件) 画像③
    脈拍は基本的には1分間測定だが、状態の安定している患者様は10秒×6や15秒×4で算出するなど測定方法が統一できていない現状があった。10秒×6で算出する場合には66・72・78と60回から6回刻みでピークが出ており、15秒×4での算出する場合には60・72・84となり6と4の倍数でピークが出ている事が分かった。

  4. 血圧(水銀血圧計を用い聴診法で測定、総件数は約66000件) 画像④
    切れの良い大きな目盛り、例えば最高血圧では100・110・120、最低血圧では60・70・80など10mHgおきにピークが出現している。これは意識的に10mmHg刻みで測定をしていることを示してる。また、偶数目盛りの為、奇数は読まれない傾向であることが分かった。

  5. 尿量(ウロバック内の量を目盛りで目測またはオムツ量を秤で測定、総件数は約14000件) 画像⑤
    ウロバックや秤の目盛を100刻みで測定することが多く次に50刻みでの測定が多かった。

[考察]

私達は、日々業務の中でバイタル測定を行っているが、今回のように基本的な患者データであるバイタル測定にバイアス的な証明をした報告は少ないと思われる。 当院での結果は器械で測定する項目についてグラフでは「生態の分布」を示した。バイアスとは「真実の値から系統的に偏った測定結果を生じさせるプロセス」であり「測定時のバイアスは測定条件が異なることで生じる事が多い」と言われているように、脈拍測定では測定方法がまちまちであるためバイアスが著明に表れた。 血圧測定では血圧計自体の目盛りが2mmHg刻みで(画像⑥)あるため奇数値ではなく偶数値を読むことが多くなり、患者様の腕を圧迫しての測定なので、大きな値に引きつけられることや状態が安定しているときには大まかな値で「良し」とする看護師側の心理的な傾向があると思われる。 また尿量もウロパック(画像⑦)の大きな値に引き付けられる事や、オムツを秤に乗せた時に針が制止するまで待たずに大まかな値を測定値としてとらえるなどの傾向があるためバイアスがかかると思われた。

このように

  1. 測定条件が統一化されていない
  2. 限られた時間で測定するため大きな値にひきつけられる
  3. 大まかな値で「良し」とする心理傾向
などの理由で当院でのバイタル測定にはバイアスがかかっている事が分かった。

[まとめ]

今回は新卒からベテランまでキャリアを考慮せずに集計したものを分析した結果であり、人が行う「測定バイアス」を見ることが出来たと思われる。
バイタルサインは、状態を的確に把握するための情報なので皆が同じように正しい方法で測定しなければならないと分かってはいるが、私たちはそのことに目をつぶってしまっているのではないではないだろうか。 臨床的には支障のない程度の誤差だが、私たち看護師の測定するバイタルサインにこのようなバイアスがかかっているということを知っておくべきだろう。
また、今後の課題として標準化した測定方法で統一化していき当院の測定バイアスがなくなり生態の分布となるかを見ていきたい。

最終更新日: 2008/12/25

 
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