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手作り院内イントラネット医療情報システム
-高齢者ケアプラン患者状態一括表示・簡易携帯端末看護ノートを中心に-

医療法人野毛会 もとぶ野毛病院 理事長 上田裕一
JMS、第45号、P37-43,1998 掲載

[はじめに]

今回「プライマリ・ケアを支援する医療情報システム」をテーマに、第21回日本プライマリ・ケア学会が、埼玉で開催された。情報化・コンピュータ化を時代の流れとして受け入れざるを得ない消極的態度から、保健・医療・福祉の連携や今まで出来なっかたサービスを展開し積極的に活用する発表が相次いだ。患者とのコミュニケーションを取る上でも、医学的知識のみならずレセプト開示・カルテ開示もプライマリ・ケアの一環として積極的取り組む姿勢が随所に見られた。
電子化することによりカルテも医者の独占的使用物の時代は終わり、患者のためにコメディカルとともに作成する利点も明らかになった。電子カルテというと従来の医者の使用する「紙のカルテ」の延長上に理解する傾向があるが明らかに別の物であり、患者に関する全ての電子化された情報群(データ系)と理解したい。そこには最低限の統一フォーマット化も必要であるが、それぞれの機関で患者サービスを模索し情報を電子化していく姿勢が大切である。そして情報公開の準備としてインターネットを意識したインターフェイス(表示系)も整えておく必要がある。
さらに今盛んに議論されている要介護認定、ケアプランですら、医療の無い介護はありえないから電子カルテの一部となる。今回は在宅ケアの基となった高齢者ケアプラン(MDS-RAPs)をケアカンファランスに適した状態一括表示を行ったので供覧する。またネットワークが院内に敷設され、NSステーションまでは連結できても病室までのネットワーク化は現状では無理である。しかしながら患者の情報が発生するのは病室が主であるので現場での入力の方法として簡易携帯端末による看護ノートを開発したので発表する。


[院内の情報システム]

a.基本方針
通信プロトコールTCP/IP、UNIXを基本として、PC-UNIX、WindowsNT,Windows95を随時必要に応じて増設している。独自開発を原則として機種依存性を無くしシステム拡張のコスト軽減を図る。開発言語はC-Language、BASIC、Visual Basic, Perl、Javaなど、言語の特徴を生かして用いる。

b.データベースbr> リレーショナルデータベースとしてInfomix,Access、表計算ソフトLotus,Excel、それにCSV形式を含むテキストデータベースを適宜選択する。データベース化については入力しやすくすることを第一義として、ワープロ(.txt),オーダ入力は表計算ソフトや電子メール改良版、レセコンはC-language、ネットワーク外では電子携帯端末独自プログラミングの看護状態記録、等々多種多様の入力ソフトを開発。データベースの統一化よりもディギタル化を優先しインターフェイスで統一化する。

c.インターフェイス
インターネットでの公開が前提であるので最終的なインターフェイスはWeb-ブラウザ上表示するため、Java-appletを中心とする。従来の表示系も使うが暫時Web上に表示していく。

d.Webとデータベースの接続
キャラクタではPerl-CGI、グラフィックではNet-Driver(3タイプ)->applet、JavaWebServerの Servlets -> applet,CORBAの一種のHORB -> appletのテストの結果、実行速度の面でHORB -> applet(Perl-CGI -> applet も一部使用)を基本としBrausaのコントロールにLiveConnect(Netscape社)も用いている。

e.開発・実用の経過
診療所開設(s.59)時にはレセコンを開発し、病院に移行時(s.63)には院内にUNIX-Ethernetによる院内ラン・オーダシステム、C- languageによるレセコン、検査センターから血液などの検査データディギタル転送(h.1)、表計算ソフトのMacroプログラミングで病棟システム(h.6)、Visual Basicによる看護システム(h.7)、メール付きリアルタイムカードシステム開発(h.8)後、院内Web(h.7)の稼動、Web-CGIによる従来のデータをブラウザ表示(h.8)、簡易携帯端末Zaurus(シャープ社)のAdd-in ソフト開発による看護ノート・Web温度板(h.9)、内視鏡、Echo、X-線画像イントラネット電子カルテ(h.9)、が稼動している。院内の業務・診療を含めすべてイントラネット化している。


[高齢者ケアプラン・患者状態一括表示]

H.6年4月の診療報酬改定で「老入管(I)」の点数をとるのに「看護・介護計画」の策定を義務づけたことにより、介護力強化病院で積極的な取り組が行われた。
患者ケアに必要な最小限項目(Minimam Data-Set,360項目)を調べ、問題領域の選定、ケアプランの作成をし、実際の現場で実行していくシステムである。Dr.Weedが開発し日本では日野原等による紹介で日本でも一般化したPOSを徹底して行うものと理解して良いであろう。POSの初めよりWeed等はコンピュータの活用を模索していたが、時が1960年代でいまだ一般化しておらず日本に導入した時点で欠落していた。データは3ヶ月毎に取りまた状態が変化してケアプランの変更を必要とされた時も再度調べるので、実際に行うとかなりの手作業を必要とした。
看護業務での荷重は1人の患者で3時間は必要であったのでデータ入力から選定表・問題領域確定までをコンピュータでアシストにしたところ15分ですむようになった。そのあとケアカンファランスをするのだが、360項目を個別にカンファランスをしているとそれぞれの項目が関連していてカンファランスがスムースに行われないことがしばしばであった。そこで360項目を出来るだけグループ分けし(106要素)にまとめそれぞれをグレードで表示する様にした。健常者では同心円上に中心近くにデータが集約し、異常や重症や介護の手のかかるほど辺円に位置するように円グラフ表示したところ患者の状態が一目で判断できるようになった。
これを患者状態一括表示として日常の診療・看護・介護にまたケアカンファランスに活用している。
図で説明すると、中央に360のアセスメント項目を生活環境に関する項目7、認知・コミュニケーション・視聴覚に関する項目15、麻痺などの身体機能に関する項目35、気分や行動に関する項目18、診断に関する項目3、栄養に関する項目7、皮膚やじょくそうに関する項目6、特別な治療に関する項目15に集約して、青色の棒グラフで中心ほど正常辺円ほど重症として表示される。
左辺には看護・介護計画を立てるべき項目が表示されこれに沿って中央のアセスメント項目と関連してカンファランスを進めている。また右辺には専門リハビリ・病棟内リハビリの1週間の関わりが示され、中央の身体機能を中心に関連付けして検討が行われる。
専門分野の職員が集まるカンファランスの前に各部署で全体を見ての検討が行われ密度の高い話し合いが行われるだけでなく、例えばAの生活環境を読み取ると患者の見舞いや医療費の支払予測もでき事務職員も関心を持ってきている状況である。


[看護ノート 簡易携帯端末の活用]

NSステーションでデータの入力や患者情報・オーダーなどが可能になってみると、病室での情報発信源からメモを取って持ち帰って椅子に座ってデーターを打ち込み、共有データベース化をせざるを得ない。
病室で簡易入力しネットワークへ転送する必要性から、シャープ社のZaurus6000シリーズの活用を考えAdd-inソフトを作成した。コストをあまりかけずに患者情報を出来るだけリアルタイムに活用し医療に役立たせることを目指た。ネットワークのデータをZaurusに転送し、Zaurusで新たに入力されたデータはネットワークに載せるのを原則として、重複入力を極力廃した。
病室選択-> 患者選択-> Vital入力-> 状態入力-> 看護記録-> 保存 がメインの流れであるが、ネットワークからダウンロードしたオーダーの確認と実施チェックまで用意した。入力されたデータはネットワークにNSステーションで転送され、温度板表示される。
1年を経過し看護婦の転記業務の減少、温度板作成業務の廃止等の効果を見た。さらに病室介護者のレベルアップでナース業務の補完が行われ、ナース本来の看護業務に励む事が出来た。個々の患者データが入力されると集計業務はコンピュータが行い、当日の有熱者、血圧上昇者がリアルタイムで病棟全体として把握でき温度板と共にナース申し送り業務が個別方式から全体把握方式へ、記憶・メモ方式から画面確認方式へと変化してきた。
従来の病院医療情報システムは医事会計、オーダーシステムを主として来たが、現在のコンピュータの進歩により患者データ中心に開発が行われている。其の中でも時間ごとに発生するVaital Sign、食事量、尿便の量などが容易に入力されれば一挙に電子カルテは出来上がる。
電子カルテ自体データの集合であるから、次々と必要とされるものが追加され其の範囲は決められない。出来るところからデジタル化、共有化、イントラネット化を進めていく以外には無い。また職場での作業に熟練をすればするほど世間に通用する能力が培われる技術習得であって欲しい。其の意味でも世の中インターネット情報化社会へ突入しているので、医療のみに通用するソフトよりもイントラネットでブラウザでの表示、また電子手帳を多用する方式がこれからの医療情報システムであると言える。いまでは電子手帳からインターネット接続まで可能である。


[おわりに]

行政機関の情報公開化が進展する中で、医療機関にも情報化の波が押し寄せてきた。レセ開示やカルテ開示ばかりではなく、行政側からの院内資料報告義務は広がる一方である。
病院の運営に関わる統計資料も、医療界の氷河期で生き残るためには微に要り細いに要り作らざるを得ない。医療もチーム性になれば各部署のデーターは一個所にあれば良いわけはなく、院内のケアカンファランスには各部署のデーターをコピーして配布せざるを得ない。このような作業を手作業でしていたのでは、職員がいくらいても足りない。
初めはワープロや表計算ソフトを活用すればなんとか対応は出来たが、いまでは単独で稼動しているコンピュータでは他の部署との連絡はスムースさに欠ける。院内LANと共有データベース化で連携は良くなったし、幸いインターネットが世に広まり、院内ではイントラネットにシステムアップしたら、多くの職員がコンピュータを利用するようになった。情報交換・発進はほとんどネットワークを介して行われている。
しかし医療の現場ではコンピュータの置けないところがある。特にデスクワークでない部署(病棟での看護婦・介護者など)は取り残されている。このような現場でこそ患者の情報が発生する。従来のレセコンやオーダーシステムは患者や現場で日常に必要とされる情報の共有化ではない。患者の情報を現場で入力でき介護者までが気楽に使えるツールとして、簡易携帯端末を用いてネットワーク外で入力し、ネットワークコンピュータに転送できるようにして一年たった。
今では病棟には手書きの温度板はない。コンピュータ画面を使って申し送りを行えるようになったし、個別患者の申し送りから、全体での申し送りに変わってきている。
現場からのソフト開発の真価が出てきた感ありで、今後とも発展させるつもりである。

最終更新日: 2008/12/25

 
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