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2006年 療養病床協会

表皮剥離の事故防止対策
-医療事故報告事例の分析と予防への取り組み-

医療法人野毛会 もとぶ野毛病院 療養病棟入院基本料2
又吉 努 国場紗野香 渡邊 千津

私たちは、医療事故報告の中でも、最も多く発生している表皮剥離について調査し、その予防策を検討したので報告します。

調査は表皮剥離に関する事例の検討と事故防止対策を目的とし、対象は慢性期病棟60床の患者様で、期間は平成17年1月~平成18年5月までの17ヶ月間としました。
方法として、以下の8項目で発生要因をデジタル分析しました。
①医療事故発生別⑤部位別剥離件数
②月別表皮剥離集計⑥同一患者剥離件数
③時間別発見数⑦年齢別剥離者数
④発生場所別⑧体重別剥離者数

当院で開発された事故報告入力ソフトを活用し、蓄積されたデータを集計・分析・事故パターン等の解析に役立てました。(画像①)

事故報告の内容別にまとめたものでは(画像②)
前年度と比較すると、報告事例が倍増し、中でも表皮剥離が全体の78%を占めており、要因は寝たきり防止のため患者様を出来るだけ離床させたこと、医療事故に対する職員へのけいもう活動、事故を報告しやすい環境作りなどで、職員の意識的変化がうまれました。 報告者別に分けると看護師に比べ、介護職員からの報告が多く、今後介護職員を中心としたカンファレンスが必要だと考えました。

月別にまとめたものでは(画像③)
5月より増えている背景には、新入職および人事異動による情報不足、知識・技術の未熟さによるものに加え、全患者様の離床をおこなった結果だと考えられます。
7月には勉強会が設けられその結果、職員間の自己意識が高まり夏場をピークに漸減していったと考えられ、定期的に勉強会を行っていく必要があると考えました。

時間別にまとめたものでは(画像④)
午前中に業務が多く、患者様への配慮が欠けているのではないかと考えます。また、特に多い時間帯が食事前後であることから、件数の増減は、離床や移動などで事故に遭遇する機会が増えるからと考えます。

場所別にまとめたものでは(画像⑤)
移乗・移動による報告が、全体の31%を占め、確認不足などが、多いことが分かりました。
ベッド上での報告内容で特徴的なのは、すでに剥離していたという報告が60%と多く、事故後にベッド上での創部の発見により発生機点が曖昧となり、事故要因が特定できないことが問題と考えます。

部位別にまとめたものでは(画像⑥)
ほぼ全体が上肢・下肢の四肢の剥離で、結果として60%に麻痺や拘縮がみられました。障害部位の把握や気配りが、十分になされていない状況があると推測されます。
同一剥離者数で特徴的だったのが、何度も繰り返す患者様は同じ部位に剥離が生じています。これは、患者様の病態・障害部位が十分に把握されていないと考えられます。

年代別では(画像⑦)
加齢とともに割合が高くなってきていることが分かります。加齢に伴い皮膚の弾力性が低下し、外力によって容易に剥離してしまうことを、再認識しました。

体重別では(画像⑦)
体重の増加とともに割合が高くなってきていることが分かります。
重い患者様に事故が発生しやすいということは、ボディメカニックスが活用されていないと考えられます。

結論として、表皮剥離は以下の場合に発生しやすい。
①移乗・移動時に起きやすい
②受傷部位は四肢に多い
③麻痺・拘縮などの障害部位
④同一部位に多い
⑤高齢で、より体重が重い

したがって事故防止対策として以下の徹底を図ることが重要
①危険因子の正確な情報を共有する
②常に危機意識をもって確認する
③チームケア(医療)の徹底を図る

今後の継続課題として
①同一剥離者のリスクマネジメント後にケアプランを作成する
②カンファレンスを介護職主体のものとする
③定期的に勉強会を開く(事故防止対策委員による勉強会を教育委員会の協力のもと、定期的に実施しています)
④医療事故防止対策の一環として日めくりカレンダー(画像⑧)を声に出して読み身に付けていく ※当院の職員より標語を募集し、採用された標語を各病棟に掲げています。

次に物理的事故の発生要因を予防・保護または、除去することが必要であると考えます。
①危険箇所の保護では、下肢の剥離の多い患者様に対してベッドサイドにスポンジを取り付ける(画像⑨)
②トイレなどの出入り口コーナーを保護する事により剥離を予防。
③車椅子では、フットレストはカバーを作成(画像⑩)
 肘置きでは、固定ネジにより自傷される患者様や、周りがプラスチックになっている事で、移乗時に剥離する患者様がいます。その予防の為に、患者様にあわせてスポンジでの予防を施行しています。
④廊下のスロープで、防護柵を使用し転落への注意をうながす(画像⑪)

以上が当院での事故防止に対する継続課題です。

終わりに
事故による損傷は患者様自身に与える苦痛が大きく、障害により機能の損失を招くこともあり、時に不必要なコスト・援助が生じる恐れがあります。事故報告は医療従事者の義務・責務であり高齢者が増え続ける中で、効果的な対策を講じることは必要不可欠な事であると考えます。

最終更新日: 2008/12/25

 
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