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リハビリテーション科における現状と課題

医療法人野毛会 もとぶ野毛病院
理学療法士 国場 昌代

[はじめに]

 当院リハビリテーション科(以下リハ科)をH18年10月より再開し、入院・外来患者様の機能向上、ADL能力維持・向上を目的にリハビリを実施している。
 現在の診療報酬算定となったH20年からH23年8月までの退院患者の状況について調査を行い、その結果について若干の知見を得られたので報告する。

  [対象]

 H20年1月~H23年8月までの3.8ヵ年間。
 当院リハ科において治療介入し、退院された患者全235例(全退院患者数719例)を対象とした。尚、外来患者は除く。

[方法]

 診療録より年齢、性別、疾患別リハ区分、退院先、在院日数、退院時の身体状況、介護保険の利用状況、リハビリ開始までの日数などについて調査を行った。

[結果]

①年齢別では80~90歳台が75%以上と高齢の方が多く、男女比では6対4で女性が多い。
②疾患別リハ区分では運動器リハビリ(以下運動器リハ)は運動器疾患そのもののリハビリが多いのに対し、脳血管リハは廃用症候群(肺炎・手術後)によるリハビリが多い。
③運動器リハは骨折、関節変性疾患が多いが、部位では脊柱疾患(胸・腰椎圧迫骨折、変形性胸・腰椎症)が多い。
④自宅退院率が6割と高く、身体状況も何らかの移動手段(歩行器・シルバーカー・PUW・杖など)で歩行を獲得していた。
⑤在院日数も30~60日未満が約6割を占める。入院からリハビリ開始時期も5日以内が約6割、中でも廃用症候群の方の割合が約5割と高い。しかし3週後にリハビリ開始となった症例もあった。
⑥退院後、介護保険サービスの利用も約4割あるが、2割半は全く利用なしの方もいた。

[考察]

 今回、リハビリ介入患者の退院時状況について調査した。80~90歳台が7割以上と大半を占め、廃用症候群(肺炎・手術後)でのリハビリ処方が脳血管リハの約5割と多い事がわかった。
 高齢者は基礎疾患を有している事が多く、体調不良で臥床が続くとそれに伴い、関節拘縮や筋萎縮、筋力低下などの廃用症候群が2次的障害として発生しやすくなる。ちょっとした体調変化に対し対応できるよう、医療スタッフとの連携を密にし、早期離床を進められるよう日頃からの心がけが必要かと思われる。
 運動器リハにおいて骨折、変形性関節疾患双方に共通して脊柱(特に胸椎・腰椎)の障害が多いことがわかった。体幹(脊柱)は人間の発達・進化の際、重力のメカニカルストレスを受けやすい部位といわれている。
特に可動性の大きい胸椎・腰椎において障害が多いという事が裏づけられており、体幹と連結する骨盤を含め、障害(ストレス・疾患)を最小限にするために運動はもちろん、日常生活における姿勢についても指導を行うなど、気をつけなければならないと思われる。
 呼吸器リハについては今年より算定をはじめたばかりであり、症例数は少ないが、今後基礎疾患にCOPDなど呼吸器関連の疾患を有する患者様も少なくないため、増加していく可能性がある。全身状態に注意しながら進めていきたいと考える。
 また自宅退院率も約6割と高く、在院日数も約2ヶ月以内で、杖・歩行器など何らかの移動手段がとれる方が在宅へとつながる目安となる事もわかった。移動手段を早期に獲得するためにもリハビリ開始が早期から処方され、日頃から担当医師、病棟間との連携を図る必要性がある。また在宅生活が続けられるよう介護保険サービスの必要な方への情報提供・紹介がなされ、医師、看護師などの医療スタッフだけでなく、本人、家族、ケアマネージャー等と共に情報を共有することが大切である。
そのためにも我々スタッフが医療保険だけでなく、介護保険についても理解しておかなければならない。在宅生活をよりよく、長く維持していただくためにもリハビリ技術の向上はもちろん、様々な制度の仕組みも学び、日々躍進できるよう積極的に努めていく必要があると考える。

[参考文献]

1.介護保険による理学療法の展開
  塩中雅博 PTジャーナル第42巻第8号
2.高齢者の脊椎圧迫骨折と理学療法
  高見澤一樹 理学療法28巻7号
3.医療から介護への移行と課題
  浜村明徳 PTジャーナル第42巻第8号

最終更新日: 2012/09/15

 
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