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転倒事故の要因と防止への取り組み
-転倒事例の分析と転倒アセスメントスコアシートでの取り組み-

医療法人野毛会 もとぶ野毛病院 療養病棟入院基本料1
○金城真琴 嘉手納修子 端保真由子 玉城由美子

[はじめに]

私達の病棟は病床数44床の入退院の多い病棟で、現在の入院患者様の平均年齢は86歳です。
転倒事故、表皮剥離等の発生頻度が他の病棟と比べて最も高く、事故後随時にカンファレンスを重ねていたのにもかかわらず、未然に事故を防止する事が出来ていない状況でした。
その為、私達は病棟全体の転倒事故発生を最小限にする事を目的に既存の転倒アセスメントスコアシート(以下、転倒シートと呼びます。)を使用する事となった経過と結果を報告します。


[研究期間]

 平成16年11月~平成17年2月まで


[方法と経過]

①平成16年5月~10月までのインシデント・アクシデント報告書よりデータを集計し状況別の統計を出しました。
②転倒シートを利用し危険度の把握をしました。
③危険度別対応策の策定をしました。
④転倒シートによる継続評価策定をし、スタッフへの周知徹底を行いました。

図1(画像①)は平成16年5月から平成17年2月までの転倒件数
図2(画像②)は事故発生場所を表しています。
図3(画像③)転倒発生時間の統計となっています。ここでは、発生時間は殆ど差が無いように見えますが、患者様の移乗・移動中が多い、また食事前後・入浴前後・排泄時間が多く、転倒の要因としては、認知不足により、ナースコールを押していない・柵外しを含む転倒や身体能力の自己過信、尿意や落下物を拾うなどの自発的行動がみられました。

また患者様側の要因だけはでなく、スタッフ側の要因としても、

①入院時の患者様の情報収集が不十分である。
②転倒に対する危険性が評価されていない
③観察・見守りが不十分である
④報告書の《今後の対策について》では、患者様の個別性のある看護計画となっていない。
⑤個別的な対応策が立案されても、スタッフの対応が統一されていない。
などの問題点がありました。

従来では転倒に対する危険度の予測を入院時の疾病やADL状況により、行なわれていましたが、その指標が各自あいまいであったということが反省できました。そこで、未然に転倒を防止し、安全・安楽な療養生活を提供できるよう指標が必要であると考えました。ここで今回取り上げました転倒シートと転倒危険度別対応策例を紹介したいと思います。

※《転倒アセスメントスコアシートの表示》(画像④)

この転倒シートはある入所施設で実際取り上げられている転倒シートであり、アセスメント項目を【年齢・既往歴・身体的機能障害・精神的機能障害・活動状況・薬剤の使用状況・排泄状況】についての項目毎に評価をする事で、その合計点数を3段階に表す事ができます。
またその危険度別に応じた対応策例も同様に観察項目・援助法が3段階に表示されています。これは、あくまで初期の対応策であり、個別的な援助方法は患者様のより多くの情報の中で考慮されます。

転倒シートのメリットとしてはご覧のようになっています。

①患者様の個別な情報の明確化
②問題が抽出しやすい、
③3段階の評価の為、評価しやすい(1回/月)
④スタッフ全員でリスクの管理ができる(対策統一)
⑤科学的裏づけをもった判断ができる。
これらをふまえスタッフ全員が転倒リスクを管理するという意識を持ち、入院患者様全員を対象に転倒シートを活用する事としました。

実際の取り組みとしては、フローシート(画像⑤)の作成を行い実際の取り組み方のマニュアル作成をしました。
プライマリーナーシングによる毎月1回(15日)再評価を行い、病態やADLなどの変化による転倒の危険性の把握や実際のケアの評価を行います。
定期・臨時のカンファレンスを持ち、統一した援助が出来るようにします。

これが実際のスコア表示(画像⑥)<になっています。ご覧の様に現在の入院患者様の多くは転倒リスクが高いことがわかります。
援助の際に危険度がすぐに確認出来るよう、ベッドサイドに識別シール(画像⑦)<を貼る事でより円滑な情報の伝達・統一された援助が行えるようにしました。また、スタッフ要員の問題対策として、誘導方法や手薄になる時間帯の業務の工夫をし取り組みました。


[結果]

今回の研究に取り組み、転倒件数は減少しています。
スコアの結果によると現在の入院患者様の多くは転倒リスクが高く、また、身体的・精神的機能の変化がある場合、転倒のリスクはさらに高くなり、観察を重視しなければならないことや高齢者は常に転倒リスクがあることが再認識できました。


[考察]

患者様の転倒リスクとして機能障害・薬剤の作用による内的要因、環境をはじめとする外的要因に分かれます。
転倒シートの活用により、転倒の危険度の高い患者様をスクリーニングでき、スタッフ全員が情報を共有化・アセスメント・計画・実施までを可能にしました。
しかし,転倒シート活用後でも、不可逆効力で転倒事故が起きている事は事実です。今後とも転倒対策への意識をさらに高め、転倒シートの見直し・改善を課題としたいと思います。

最終更新日: 2008/12/25

 
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